パソコンCPUの液体金属グリスにおけるリスクについて考察する
AMD CPUピンの修正や修理をしていると色々な状態のAMD CPUについてのお問い合わせをいただきます。
以前から気になっていた症状を紹介します。
注意:理解後、読んでください
この紹介する内容は決して、『液体金属グリスを使用しないで下さい』との内容では有りません。使用方法に関してのことです。
通常のピン折れ状態紹介
通常のいわゆる『スッポン』や『CPUの落下後の手直しミス』などの場合は、ほとんどの場合、ピンの中心部が残り、ピンのベースがCPU側に残っているのが通常の欠損状態です。
またピンの根元にクラックが入った状態でそのまま触らず残っていたりします。
特殊な欠損の具体的な事象
AMDのCPUピンが外れたので修正して欲しいとの内容でした。
現物を見ると、CPUピンの根元に何か光る異物らしきものが付着しています。
また、ピンが外れた箇所を見ると、外力で破壊したにしては、ベースが変形していません。半田のフィレットらしき物も見えます。
他の事例では、フィレットが無くフラットな電極が見える場合もあります。
いずれも、従来のピン折れでは無い事は確実です。
更に解析
どうも通常のピン欠損ではなさそうです。さらに詳細によく観察した結果、CPUピンにも『液体金属の粒』が付着している物を発見。
更に観察するとCPUのピン面の端面にも微妙に液体金属が薄くではあるが付着しています。
欠損の発生原因
液体金属グリスの使用に関しては相当の注意が必要と紹介されていますが、今回のCPUには、液体金属グリスが散乱しています。ピンにも根元にもグリスの玉 表面張力がきついので玉になる)が貼り付いています。
電気的にはショート状態です。そのグリスを除去すべく触っている時にピンも同時に剥がれます。
それはわずかな力でピンを剥がしたように見えます。更に剥がれた面を観察すると表面は埃をかぶったようにボロボロです。
つまりはピンを接続している金属に腐食が出て、保持力を失っているようです。使用方法、塗布方法、管理方法が適切でなかったと考えます。
ある液体金属グリス取説より
・アルミを浸食するためアルミ製のヒートシンクには対応不可
・接触面が銅ベースのヒートシンクを指定
・導電性がありますので端子に付着するとショート可能性があり
・合金によって作られた極めて熱伝導率の高い液体金属
・取り扱いは難しいが、高パフォーマンスを求める経験豊富なユーザーにお勧めします。
液体金属グリスの使用に関して
私なりに、液体金属グリスの使用に関しての注意事項を列挙します
1.液体金属をこぼさない管理が出来るか
2.液体金属グリスに対応できる対象金属か
3.経験豊富なユーザーか
4.リスクを承知の上で使用するか
5.慎重な作業に自信があるか
6.ピンが欠損した場合は修理は出来ない事を理解しているか
7.メーカーの取り扱い説明書や注意事項を熟読し理解しているか
8.必要に応じてマスキング技術はあるか
9.ルーペなど詳細な作業確認ができるか
10.グリス塗布は難易度が高い事を知っているか
この様に、多くのハードルがあることを理解の上使用して下さい。
弊社として
基本的に液体金属グリス使用に伴うピン欠損の修理は難しい(出来ない)ので、不具合の確認は致しますが、ほぼ修理不可能と思われます。
結論
良い商品がいろいろ有りますが、使用方法を間違えると取り返しのつかない結果
を招きます。取扱説明書を熟読し使用しましょう。
液体金属グリス使用に関するブログでした